ドイツで整形外科靴1足おいくら?

こーゆーお値段に関するお話は自分で自分の首をしめるような結果にならねばよいが、SchuhBonzの靴のお値段にも直結する内容。基本的にはドイツの価格を参考にして決定する予定。

 ドイツにも勿論
保険制度がある(日本の制度はドイツの制度をまねたもの)。したがい保険で整形外科靴の支給を受ける場合、自己負担額が67ユーロと決まっている。ちなみにバイエルン州では、整形外科靴は2年に1足整形外科的スポーツシューズは4年に1足、安全靴が2年に2足糖尿病の潰瘍治療靴が1足プール靴が4年に1足健康保険で支給可能。

ドイツの場合の保険で整形外科靴を製作する場合の手続き
@:整形外科医による診断
A:レセプト(処方箋)交付
B:加入する保険会社にレセプト(処方箋)を提出
C:患者が選択した整形外科靴マイスター(以下 OSM)がレセプト(処方箋)に従い見積書作成
D:保険会社からの製作許可が降り次第OSMは整形外科靴製作を開始
E:納品時に自己負担分67ユーロまたは差額を支払い納品完了

 それでは何を根拠にOSMが見積もりを立てているかと言えば
PG-31という整形外科靴および既製靴の整形外科的調整に関する価格表(足底板に関してはPG-08、弾性ストッキングに関してはPG-17)である。OSMがこのPG-31に忠実に見積もりを立て保険会社が認めた場合、顧客は自己負担分67ユーロ支払えば保険による整形外科靴の支給が受けられる。もしも認めた支給額とOSMの見積もりに差額が生じた場合は、患者はその差額分だけ自己負担すればよい。これは日本の厚生労働省価格表にあたる。日本では整形外科靴や足底装具も含まれているが、ドイツの場合は義肢装具士マイスター整形外科靴マイスター(OSM)は異なる職業(しばしば義肢装具製作所が経営するサニテーツハウスはOSMの競争相手)であるため整形外科靴と義肢・装具の価格表は完全に別のものである。従い日本の義肢装具士のような見積もりを立てる段階での苦労(日本の厚生省価格表は整形外科靴や整形外科的調整に関する限り非常に大雑把。インナーシューに至っては価格表に掲載すらされていないため、製作したものの下肢装具の見積もりではやはり無理がある)がないばかりか、制作費の水増し請求が非常に困難。
 それでは実際に
PG-31をもとに見積もりを立てて見ましょう。

 条 件 :

男性65歳、
CPによる、両側痙性麻痺患者で左が痙性が強く、手にも軽度の麻痺があるものの時間をかければ、靴紐を結ぶことが可能であり、紐靴を希望。両足尖足位(踵に2.5cmの尖足位の調整)。この症例に写真の整形外科的スポーツブーツを製作


             

見積もりは医師の処方箋に従い、例えばクッシヨンロッカーバーなどの調整加算してゆき、合計する。もしも医師の処方に疑問がある場合は必ず、OSMは医師に処方の根拠や、調整方法を議論する。

処 方 コードナンバー 個 数 価 格
整形外科的スポーツシューズ :
両足3cmまでの尖足位の調整、
ロッカーバーを施したフットベット、
アッパー(ハトメまたはベルクロ)
を含む
31.03.01.2000 2(左・右) 518.2ユーロ
チェックシューズ 31.99.99.0001 2 66.82
木 型 31.03.06.0001 2 244.32
アッパー上縁クッシヨン 31.03.02.5005 2 18.12
ベロクッシヨン 31.03.02.5005 2 18.12
月型芯の強化 31.03.02.3000 2 50.12
ロッカーバー 31.03.02.0001 2 33.4
アウターソール 31.03.02.0004 2 14.96
ヒールロール 31.03.02.1000 2 33.32
合 計 税込み997.38ユーロ
    約129,659円

    (1ユーロ=130円)

 この見積価格はオーダーメイドの整形外科的スポーツシューズ1足の価格である。税込み価格とは物品税(日本的には消費税で通常16%であるが医療生産物は7%込み値段のことである。価格は通常片足で表示してあり、両足に各種調整を施す場合は単純に2倍にすればよい。上記の価格はこの合計価格である。勿論、ギプス採型、採寸、木型製作、チュエックシューズ、自家製のアッパー、底付け、仕上げまで含んでいる。価格自体は日本の厚生労働省価格の方が、(ドイツの物価水準と比べて)かなり低いと思われる。この価格はあくまで保険適応の価格である。例えば非常に高価なワニ皮や、凝った手縫いの底付け、など整形外科的な仕事以外の特別な仕事をした場合は、その材料費と工賃は患者の負担となる。単純には比較できないが、ドイツの物価水準は日本の50〜70%(ミュンヒエンなどの大都市や有名な観光地は日本と大差ないか、やや安いが、田舎はかなりお財布にやさしい)である。例えばスーパーマーケットでビール1本約高くても1ユーロ(約130円)、食パン1斤(500g)が60〜70セント(70〜80円)、高速道路無料である。したがい物価の差から言えば、ドイツ国内での価格の方が日本の価格よりも遥かに高いことになる。逆に言えば日本の価格がすぎる訳で、厚生省価格で凝った靴を作れば作るほど赤字(だから私は自己負担分を戴いております)になってしまう可能性が高い。そのため殆どの義肢装具製作所が整形外科靴製作に二の足を踏んでしまい日本の義肢装具士で靴のスペシャリストが育たなかった原因(価格だけでなく教育もかなり問題)であると考えられる。とはいえ私個人は、仕事の内容からすればドイツの整形外科靴の価格はかなりお得であると考える。なぜならば症例にもよるが整形外科靴1足仕上げるのに延べ5〜6日かかる訳であるから、マイスターの時間工賃材料費を考えるとこの価格では実際のところかなりキツイはずである。最近流行りの正調英国式ビスポークの手縫いで完璧な工芸品が1足約30〜40万円(ホントは私もそれくらい欲しいが・・・・・)。仕事と材料を考えればその価格は理解できるが、整形外科靴はそんな芸術品ではなく、毎日履く実用品(だからと言って見た目がマズイのはアウト)であり、極論すれば、木型がイノチ底付け方法(手縫い、接着、木釘、機械縫い)はあくまで顧客のリクエストである。SchuhBonzでも手縫いのオーダーが入れば私も作りますが、凝った仕事は価格応談ということで、当然それなりにお値段ははりまっせ。

ドイツの価格だけ計算するのはアンフェア。そこで日本厚生労働省価格表をもとに計算した。

幸運にも両足が患足(信じられないことだが、日本の場合多くのケースで片方のみ患足となる。切断しない限り、足は2本ある。オーダーメイドシューズが必要なほど患足に厳しい変形がある場合、健足にも何らかの足部の疾患があると考えるのが普通であるのだか・・・・)と言う処方が出たとして、日本の厚生労働省の価格表で見積もってみると・・・・

以下の価格は、この症例で
最大限保険で請求できる価格である。社会保険国民健康保険ではその価格の3割負担となる。

                        ・・・・・・


厚生労働省価格表によれば、特殊靴と言う場合は患者ギプスモデルから起こしたした特殊木型を元に製作する靴のことである。この場合ギプスモデルから製作(私の製作するオーダーメイドの靴は全てが特殊靴しているためそうなる。また最近、普通の靴屋さんでも製作(どーゆー言った根拠で製作が可能なのか ??? 厚生労働省の価格表を勝手に解釈されても困るが・・・。驚くことに、特殊靴も製作される店舗も存在するという噂)されているらしい整形靴とは準備木型に皮革、フェルトなどを張って、補正して作られる靴である。ちなみにドイツの整形外科靴(Orthopaedieschuh)とは日本の厚生労働省的には特殊靴にあたる。ドイツで修行した私はなぜこのようなカテゴリーに靴が分類されるのか理解に苦しむ。整形靴や特殊靴と言わずに、採型の有無(採寸とフットプリントをもとにCAD-CAMで木型の設計および製作が可能な場合もある)にかかわらず、整形外科靴で良いのでは?もはや、採型をギプス包帯
のみ想定しているようでは時代遅れと言わねばなるまい。

処 方 コードナンバー 個数 価格
採型 B-1 2 28200
半長靴 特殊靴 2 93600
敷き革式 2 12800
カットオフヒール 2 6500
ロッカーバー 2 6500
合 計 税込み
154,980円

税込みでドイツの価格よりもあくまで最大25,321円高い。しかし物価水準や、作業時間、輸入材料、機械設備、人件費を考えると、ドイツと同等のクオリティーの靴を製作した場合、日本では完全に赤字である。あくまでこれは、両患足に整形外科靴という処方が出た場合で、日本ではこの症例の場合はプラスチックの両下肢装具を製作するであろう。となると、まともな靴が履けるかどうか・・・・。
 情けなくなるが、
日本の厚生労働省価格表の見積もり項目と、ドイツのPG-31のそれを比較して欲しい。かなり粗雑であると言える。チエックシューズや、木型、クッションなどは最初から価格表に載っていない。掲載されていないモノは請求できない。ということは、これらの作業をしてしまうと最初から赤字となってしまう。これでいいのだろうか???というか、
 
厚生労働省は最初から、特殊木型を製作して真っ当な整形外科靴を製作することを想定していなかったのであろうか??
         否

我々
義肢装具士が価格表に掲載するように厚生労働省に運動してこなかったからである。と言うことは、義肢装具士は整形外科靴について興味がないことを象徴しているような気がしてならない。

                              靴坊


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