2.整形外科靴マイスター
  への道


                                     
2-1.何も考えなければドイツへ飛ぶのは簡単。しかし…


 マイスター制度の存在しない日本で整形外科靴やアインラーゲン(足底板)などを健康保険で製作しようとした場合、整形外科靴マイスター(Orthpaedie-Schuhmacher Meister 以下OSM)の資格のみでは役に立たない。なぜならばそれはドイツ国家資格だからである。たとえドイツで承認されたOSMであっても、日本では患者に医師の処方の下に靴や補装具を製作できるのは義肢装具士のみである。全ての義肢装具士は義肢・装具の専門家であり、必ずしも整形外科靴の専門家ではないが、看護婦や理学療法士と同様に医療職であり、国家資格として整形外科靴の製作が法的に承認されている。 OSMを取得するのは個人の自由であり、また一部の健康靴販売店がOSMのセミナーに参加して整形外科的知識や技術を勉強することも全く本人の自由である。しかし、日本で整形外科靴プロ(整形外科靴は言うに及ばずアインラーゲン製作、既製靴の整形外科的調整、インナーシューなどの製作者)として仕事をするのなら日本義肢装具士国家資格が必要であることを自覚しなくてはならない。現在、日本では主に靴販売業者である一部ドイツ製健康靴販売店、およびそのグループ(決して医療職の専門家や整形外科靴職人ではなく、小売業者で構成される無国家資格者が医師の処方もないまま顧客に整形外科靴や足底板、インナーシューの製作、既製靴の整形外科的調整、医療的フットケアなどをおこなっている。このように医師ではない者(勿論OSMおよび義肢装具士であっても)が独自の判断で患者(顧客)を診断し、整形外科靴やアインラーゲンなどを製作することは医師不在の医療的な行為であり、レントゲンなどの検査機器がなければ発見できない骨の異常(腫瘍、骨折、感染など)および関節の損傷(脱臼、変形性関節炎など)や、また麻痺や血行障害などの重大な症状を見落としてしまう危険性が高い。医師の正確な診断があってはじめて精密で正しい整形外科的な仕事が可能であるという常識にたてば、このような行為は顧客に損害を与えかねず大変危険である。そのために日本では医療生産物製作技術者の国家資格である義肢装具士が存在しているのであり、たとえ非常に卓越した技術を持っていても無国家資格者は医療行為をしてはならない。ドイツのOSMでも日本の義肢装具士であっても医師の指導および処方のもとでのみ健康保険での整形外科靴やアインラーゲンの製作が可能である。それ以外は当然全て顧客の自費無国家資格者が顧客の自費で製作し、彼らがその全ての責任を負うものに関しては、私の関知するところではない。しかし義肢装具士・整形外科靴職人である私個人としてはそのような危険行為には反対する)にて製作しなければならない。また、幸運なことに自費であるためその価格は製作者の言い値で決定できるが、もし無国家資格で製作した整形外科靴や足底板により疼痛や変形、さらに潰瘍や切断といった問題が発生した場合その責任は非常に重大であり、なおかつ損害を受けるのは常に顧客である。過去に製作したものや、これから製作するものから、そういった問題の発生する可能性がある事と、その責めを負うことを全ての無国家資格者が覚悟しなければならない(自費で製作した場合は義肢装具士も同じだが、我々はすでに国家資格を持つプロとして義肢・装具の世界で行っている)。そして彼らのうちでどこの誰が何足無資格で製作し、どの程度の問題が発生しているのか誰にも正確にはその実態がわからない(顧客にはもっとわからない)ことが最大の問題である。しかし、だからといって、このまま放置し続けることは問題の拡大再生産にしかならない。ある国である仕事をする場合、その国で法的に定められた必要とされる資格を取得して初めて、ある仕事ができる。それが法のもとでの平等であり、自由とはその範囲の中にあり、ある仕事とその資格と権利を保障するものである。それ以外は、いかなる国であろうともモグリであり、違法である。自由とは耳ざわりの良い言葉である。しかし大きい自由を得れば、それと同じだけの義務を負わねばならない。これは非常に重い。わかり易く言えば我々は運転免許を取って(無免許でもバレなかったらOKか?)、クルマに乗って移動の自由とその楽しさを手に入れた。しかし、その自由は同時に一旦事故を起こせば他人の生命を奪い兼ねない。自由を満喫した結果奪われた生命はどうなるのか。そこを理解し運転することが同じ路上を走るドライバーの仁義である。自由は確かに素晴らしい。しかし、自由ほど重くて厳しいモノは無い。
 私の通学した日本の義肢装具士養成校では確かに整形外科靴に関する授業は少ないし、現在われわれが製作している靴も完璧とは言えないかもしれない。しかし、だからといって一部の健康靴販売店のように義肢装具士でない者が、整形外科靴や足底板を顧客(患者)に製作してもよいという理由にはならない。私は解剖学、病理学、バイオメカニズムなどの理論的基礎知識や義肢・装具の製作技術や、その歩行時の評価および生体への影響といった技術的基礎知識を3年間かけて学んだ。そのために、ミュンヒエンOSM養成校での(授業はもちろんドイツ語、解剖学はラテン語)解剖学や病理学、歩行のメカニズムなどは全く問題なく理解できた。義肢装具士養成校で得た深い専門的基礎知識はOSM養成校の授業のみならず実際の整形外科靴やインナーシュー製作においても十分応用できる。しかも、義肢・装具の技術とドイツの整形外科靴の技術の融合が可能だ。逆にいえば義肢・装具の知識がなければ整形外科靴は言うに及ばず足底板(アインラーゲン)やインナーシューの製作は非常に困難だ。ある健康靴販売店のグループはの中には義肢・装具と整形外科靴は異なる技術と考えている人もいるようであるが、それは大きな誤解である。なぜならば義肢・装具と整形外科靴もその技術の根本的発想は解剖学であり、バイオメカニクスである。もしもこれらの基礎的知識を軽視しているとすれば、それは設計図なし(勿論長年のカンも必要で、設計図なしでエンジンの組み付けを一人でこなす名人級マイスターも存在するが、それはあくまで例外)で高度な製作技術が必要な自動車のエンジンを製造し、組み立てるようなものだ。技術的基礎を軽視する、あやふやなメーカーの製造する自動車に乗りたいと思う人はそのメーカーの自動車の事を全く知らないか、よっぽど愛しているかのどちらかだ。少なくとも私はそういう自動車メーカーは尊敬できないし、その製造する自動車には乗りたくない。一旦事故が起こればその責任は重いし、私だってそんなつまらない、クオリティーの低い自動車で路上で懺悔したくない。粗悪な義肢装具により、その使用者が感染などの重篤な不利益をこうむった場合、PL法などで製造者責任を問われる可能性もある。これは同じ医療生産物である整形外科靴も例外ではない。医療生産物製造業者及び、医療職としての義肢装具士にもそういう重い責任があるからこそ、義肢装具士養成校が3年間(国家資格制度が異なるため単純には比較できないが、ドイツの整形外科靴マイスターは更に長い7〜8年という教育期間を設定し、かつ国家資格による高いハードルが設けられている。法的なことだけでなく、正確かつより高度なフィティングのために義肢・装具(高度な脚長差、抹消循環障害、神経障害、内反足、足部切断者や装具装着者、麻痺患者、糖尿病患者、リューマチ患者などに対する整形外科的な仕事など)の知識と技術が必要である。それゆえまず日本で基礎を学び、日本の義肢装具士国家資格を取得する必要がある。そのうえで義肢装具士の仕事のひとつとして整形外科靴製作を選択しなければならない。

                 

2-2.それでも整形外科靴マイスターになるには

これ以降のレポートは、ドイツ人であろうが外国人であろうが、ドイツで整形外科靴マイスターを取得する場合に積まねばならない修行について記す。ドイツで整形外科靴マイスターになれるのは全見習の10%といわれる。おそらくこのデータは全ての手工業マイスターに当てはまる。もちろん全ての見習がマイスターになれる訳ではない。それは個人の資質の問題であり、かつマイスターの技術をドイツ全土で高いレベルで平均化し、クオリティーの低い製品を消費者に提供しないことである。そうすることが自分たちの仕事を守る事になるからである。そういう意味でマイスターは保守的である。
 
修行期間は7〜8年である。いかなる職業でも一人前になるにはこれくらいの年数が必要であり、けっして長い修行期間であるとはいえない。整形外科靴職人に限らず職人には@見習(リエレンゲ)A職人(ゲゼレ)B親方(マイスター)3つの身分があり厳然とランク分けされる。ランクアップのためには必ず試験を突破しなくてはならない。残念ながらドイツは日本以上に資格が重視される階級社会であり、日本人の感覚からすれば権威主義的と映るかもしれない。しかし自分の仕事とその資格を守ろうとすればプロとして当然(日本の国家資格である義肢装具士でも同じ)であると言える。

2-2-1.見習(リエレンゲ)

整形外科靴職人の見習に限らず3〜3年半の見習期間が義務付けられている。この期間中は主に各工房で働きながら、年間約10週間、週5日、3年半で約40週職業訓練校に通学しなければならない(整形外科靴職人の場合)。各工房では専門的技術を修得し(というより叩き込まれる)、職業訓練校では専門的理論と職人(ゲゼレ)の資格試験の受験準備を行う。
 ドイツでは見習教育は
デュアルシステムと呼ばれ、実践は職場で、理論は学校で教育される。したがい各見習により、修得した仕事の方法や考え方に違いが出てしまうこともあるが、基本的な技術に間違いがなければそれを認める柔軟さがある。授業料は基本的に無料であり、通学にかかった交通費は全額返還された。見習い期間中(ゲゼレも)は1日8時間労働残業無し完全週休2日年間6週間の休暇。州や職種により差があるが、私の場合、1996〜1999年当時800〜1000ドイツマルク(年約100ドイツマルクの昇給)、日本円で4〜5万円の給与が与えられた。見習い期間中は、見習が患者の採型、採寸、木型製作ましてや店舗での接客、病院の営業活動を行うことは原則として有り得ない。例え私が義肢装具士でギプス採型やモデル修正が可能であっても見習は見習であって、木型の製作や、陽性モデルの矯正といった整形外科的仕事は全くタッチできない。職業訓練校でも木型の製作や患者の採寸・採型については全く教えない。見習はマイスターの指示どうりに製作するだけであり、その課程で基本的な靴製作技術を習得する。整形外科的仕事はゲゼレ資格試験合格から本格的に修行が開始される。ただし体系的理論はマイスター養成校で集中的に修得する。それゆえゲゼレ資格試験合格のみでは本当の意味で整形外科靴のプロとはいえない。
 職業訓練校の主な科目は専門実技と専門学科の2科目である。
見習1年半中間テストが課せられ、職業訓練校の卒業試験がゲゼレ資格試験である。
 
2-2-1.1.ミュンヒエン整形外科靴職業訓練校のカリキュラム
2-2-1.1.@.専門実技:

スリッパ製作 : ウエルト、革底を木釘で固定
アインシュテッヒエン(グットイヤー方式)の手縫い靴の製作 : バイエルン州では、靴製作の基本は手縫い
・アッパーの製図・縫製 : 各見習がデザイン、製図したアッパーの製作

2-2-1.1.A.専門学科:
・解剖学、病理学、機械、工具、事故防止、材料学(皮革、コルク、繊維、接着剤、ゴムなど)、数学、製図学、社会学、ドイツ語、宗教、コンピュータ実習

2-2-1.2.整形外科靴ゲゼレ資格試験科目
2-2-1.2.@.ゲゼレ専門実技試験:

・アインシュテッヒエン(グットイヤー方式)の手縫い靴を1足 : 脚長差25mmのフットベット付の短靴またはブーツの釣り込み〜仕上げまで
・既製靴の調整を1足 : 脚長差の調整25mmとロッカーバー
・フットベット1足 : 脚長差の調整15mm
以上3課題20時間で仕上げる

2-2-1.2.A.ゲゼレ専門学科試験:
・解剖学、病理学、機械、工具、事故防止、材料学、数学、製図学、社会学以上の科目をすべて筆記で3時間

ドイツで最も保守的なバイエルン地方でも2002年1月のゲゼレ資格試験から専門実技の試験内容がアインシュテッヒエン(グットイヤー方式)の手縫い靴の製作からセメント式(接着)またはホルツナーゲル(木釘によるウエルト・ソールの固定)靴製作に変更され、マスアインラーゲン(オーダーメイド足底板)製作が追加された。この実技試験科目の変更により伝統的靴製作技術の衰退が危惧される。しかし一方ではさらに高度な整形外科的専門知識を必要とする糖尿病による切断やリューマチ患者、脳卒中患者の増加、により、足部切断用や片麻痺用インナーシューなど整形外科靴マイスターの仕事の領域が広がっている。また、コンピュータによる足底圧の計測システムの普及やCAD-CAMによる木型の切削など
ハイテク化が加速度的に進んでいる。今回のゲゼレ資格試験の実技試験科目の変更はそういった時代の変化を睨んでのことである。

2-2-1.3.見習期間中に修得しなければならない靴製作の技術
・コピーアインラーゲ : 完成した木型に直接フットベットを製作
・アッパー製作
・釣り込み

・底着け : 
接着と木釘及び手縫い
・ソールの整形外科的調整
・既製靴の整形外科的調整

・足底板 : 
オーダーメイド及び半完成品
・インナーシュー
・修理 : 靴、バッグなどの革製品
などである。


バイエルン州に限らず全てのドイツ人の見習期間は必ず3〜3年半(成績の良い見習のみ3年)である。現在、北ドイツで日本人1年半(通常1年半ではゲゼレの中間試験)で整形外科靴製作職人ゲゼレ(だけでなく菓子職人など様々な職種)取得を目指すコースがある。本物の職人育成というその趣旨は理解できる。しかし靴製作の経験の有無にかかわらず、ドイツ語が完璧に理解できない日本人が(ドイツ人の見習でも授業内容を完璧に理解することは難しい)、どうしてドイツ人の見習いの半分の期間でゲゼレを取得できるのであろうか?日本人はドイツ人より手先が器用で、頭脳が優れているのであろうか?私個人の経験からしても、民族は異なるが、同じ人類としてそうは思えない。それは単に個人差である。ビザ゙の問題も確かに大きいし、修行先の受け入れ態勢にもよるであろう。そういった外国人に特有の問題を個人の力で解決することはとても困難(私の住んでいたバイエルン州でもそれは常に闘争)であるが、それでも私には理解に苦しむ。もしもドイツの整形外科靴製作技術を尊敬しているのであれば、なぜドイツ人と同じように最短でも3年間修行しないのであろうか?私はいささかアタマが古いかもしれないが岩の上にも3年である。日本の義肢装具士養成校もドイツの整形外科靴職人の職業訓練校も最低3年である。どんな仕事でもそこそこ技術的・理論的基礎をマスターするには集中してそれだけの時間が必要で、これは洋の東西・人種を問わない真理である。

2-2-2.職人(ゲゼレ)

3年半の見習期間の後、ゲゼレ資格試験に合格すると身分が職人(ゲゼレ)となり、給料が見習いの2〜2.5倍となる。贅沢をしなければ、独立した生活が営めるようになり多くのゲゼレは一人暮らしを始める.。もしもゲゼレ資格試験合格直後にマイスター養成校に入学願書を提出しておけば、3〜4年後にマイスター養成校への入学許可が降りるだろう。それまでに多くのゲゼレは入学費用の貯蓄に励むこととなる。なぜならば、マイスター養成校は有料であり、しかもかなり高価である。もちろん入学金を支払えなければ入学不可能。ミュンヒエンの整形外科靴マイスター養成校の場合、授業料が日本円で約175万円といったところである。これに寮費が月約2万7千円、生活費が月12〜14万円で8か月分かかるとすると・・・・・・である。かるく新車が買える金額であり、なかなか貯蓄は難しい。このように高価であるため奨学金も用意されているが、返済もそれなりに厳しい。それゆえ入学費用が工面できずにマイスターを諦める者も多い。実際の職場においてはゲセレで十分対応できることがほとんどで、マイスター以上に仕事ができるゲゼレもたくさんいるし、特に待遇に不満が(あっても・・・・・・)なければゲゼレで定年まで勤める人も多い。
 職人になれば、採寸、採型、木型製作、インナーシュー製作といった整形外科的仕事を覚えることができ、しかもマイスター養成校が企画する木型やアッパー製作、解剖学や糖尿病セミナーなどに参加することができる。マイスターを目指す職人は、ゲゼレ取得後早くからこういったセミナーに自主的に参加し、マイスター養成校から入学許可が降りるまで技術と知識の向上に努める.。マイスターを取るかどうかは、全くの個人の自由である。それゆえ、OSMに限らず、もしも自分の会社がマイスター取得に非協力的な場合別の会社に移籍することなど日常茶飯事である。
 ちなみに現在、横浜の天本ブレースに勤務している
天本恵輔氏は私のミュンヒエン整形外科靴職業訓練校のクラスメイトであり、日本の義肢装具士ドイツの整形外科靴ゲゼレの両方を持つもう一人のまっとうな修行をした、信頼できる日本人整形外科靴職人である。

                

2-2-3.親方(マイスター)

いかなるマイスターでも3年半の見習の後、ゲゼレの資格試験を突破し、マイスター養成校専門課程専門実技(Teil.1)専門学科(Teil.2)および経営技術課程の簿記、労務管理など会社経営に必要な技術Teil.3Teil.44科目全ての試験に合格しなくてはならない。
 私の卒業した
ミュンヒエン整形外科靴マイスター養成校(Muenchener Bildungsstaette fuer Orthopaedie-Schuhmacher Meister 以下MBO)では専門課程であり、専門実技(Teil.1)専門学科(Teil.2)、の2科目で、期間は8ヶ月(すべてのOSM養成校が同じ期間ではない)。マイスター養成校は入試が無く申し込み順で入学許可が降りる。私はすでに専門実技と専門学科は合格済み。OSM養成校はドイツ国内にはミュンヒエンの他にハノーファー、フランクフルトなどにもあり、ゲゼレ資格試験に合格していればどの養成校でも申し込み可能。カリキュラムについては各学校により異なる。詳しく知りたい方はご自分で各OSM養成校のHPにアクセスしていただきたい。
 このHPではあくまで私が卒業したMBOのカリキュラム及び試験およびマイスター養成校の経営技術及び教育学課程 BTZ(Berufsbildungs- und Technologiezentrum Ingolstadt /Freising)についての情報である。経営技術課程はOSMのみではなく、全ての手工業のマイスター志願者が同じ試験を受験する。期間は
2ヶ月。今年5月の春に残りの経営技術課程の2科目を受験した。本質的にこのBTZのコースは整形外科製作とは全く関係が無い。

2-2-3.1.MBOのカリキュラム  
2‐2-3.1.@.専門実技(Teil 1):

・患者の触診、フットプリント、採寸、採型、
・木型製作 : 木製およびポリウレタン発泡樹脂製
・アッパー製図
・アッパー製作

・底着け : 接着、木釘、手縫い
・整形外科靴製作 : 開帳足、扁平足、高度な脚長差、麻痺、内反足、足部切断の各症例に糖尿病や、抹消循環障害、リューマチなどの疾患が合併したものを試験と練習を含め9足製作
・アインラーゲン
・既製靴の整形外科的調整

・コンピュータによる足底圧の計測  スタティックとダイナミック
・インナーシュー : 足根切断、脳卒中片麻痺、内反尖足
・シリコン指装具 : 外反母趾、ハンマートウ
・フスフレーゲ : 医療的フットケア

2-2-3.1.A.専門学科(Teil 2)
・解剖学 : 下肢が主
・病理学 : 開帳足、扁平足、脚長差、麻痺、内反足、足部切断、外反母趾、ハンマートウ、など足指や足部の変形が中心。その他麻痺、糖尿病や、抹消循環障害、リューマチなど下肢に重篤な障害をもたらす疾病
・診断書の作成 : 医師・患者・学生の3者で議論し、医師の診断のうえ作成
・材料学 : 皮革、プラスティック、樹脂、接着剤、コルク、ゴム、石膏など
・製図学 : アッパーの製図
・機械学 : 構造、安全性など
・数学   : 樹脂量、木型の幅、革の単位面積の計算など靴製作に必要な数学
・経営学 : マーケティングなど
・見習の教育、保険制度 : 労働災害防止のための安全教育など
・弾性包帯、圧力ストッキング : 静脈瘤など抹消静脈の循環障害の治療用の圧力ストッキング処方のための採寸など
・フスフレーゲ : 角質やウオノメの除去、巻き爪の処置などの医療的フットケアの工具や病理

2-2-3.2.整形外科靴マイスター資格試験の専門課程の資格試験科目
2-2-3.2.@.マイスター専門実技試験(Teil 1):

・整形外科靴1足 : 患者の触診〜仕上げまで(約5日間、医師と協議したうえで作成した診断書と靴の仕様書、フットプリント、木型、ギプスモデル、チエックシューズ、アッパーの製図、アッパーの型紙、コンピュータによる見積もり計算書などの基礎資料を提出。
患者の症例は開帳足、扁平足、高度な脚長差、麻痺、内反足、足部切断の各症例に糖尿病や、抹消循環障害、リューマチなどの疾患が合併したもの。厳しいようだが、製作した整形外科靴を評価する際にソールやアッパーの
調整は一切認められない。この評価は、医師と協議したうえで作成した診断書と靴の仕様書で記述した内容を満たしているかが主な評価基準である。この判断基準はあくまでミュンヒエンの場合であり、他のマイスター養成校については不明であるが、全てのマイスター養成校は各学校独自の厳しい評価基準を設定していると考えられる。
・インナーシュー : ショパール切断用の中足足根義足的なもの、または脳卒中片麻痺用の背屈補助装具的なもののどちらか一方と、その製図及び仕様書を6時間
・フスフレーゲ : 医療的フットケア。たとえば魚の目、角質の除去、爪水虫、巻き爪の処置などを2時間以内。もちろん糖尿病やリューマチを合併している患者もある。
以上
3課題を延べ約6日間

2-2-3.2.A.マイスター専門学科試験(Teil 2)
・解剖学、病理学、診断書の作成、材料学、製図学、機械学、数学、経営学、見習の教育、保険制度、弾性包帯、圧力ストッキング、フスフレーゲ
以上の科目を2日間にわたり6時間

2-2-3.3.マイスター学科試験の経営技術及び教育学課程の資格試験科目
以下のTeil3とTeil4は整形外科靴製作とは全く関係がない科目であるが、ドイツではマイスターとはその職種の専門職人であると同時に、経営者および見習い・職人の教育者でもある。カリキュラムの大半はドイツの国内法や税制、教育法であり、日本人の私個人が日本で応用できる知識は簿記原理と見習の教育方法の一部のみである。
2-2-3.3.@.マイスター学科試験 : 経営技術課程の資格試験科目(Teil3)
・簿記原理とそのコントロール
・企業における経済取引の基礎
・法学と税金の基礎


2-2-3.3.A.マイスター学科試験 : 教育学課程の資格試験科目(Teil4)
・職業および職業教育
・口答試験および実技


 筆記試験は選択問題と筆記問題があり、簿記原理や数学など電子計算機の使用可。外国人である私の場合は独和辞典の持込が特例として認めれれた。
 ゲゼレ及びマイスター資格試験は
100点満点の60点以下、5段階評価でNote4.5以下(ドイツではNote 1が最高)が不合格となる。またマイスター資格試験の専門学科試験でNote2.5以下のゲゼレ全員に口答試験が課せられる。2002年度のミュンヒエン整形外科靴マイスター資格試験に22名のゲゼレ(うち3名が女性)が挑戦した.専門実技は1名が、専門学科は2名が不合格であり、合格率に関しては平均的であった。私の場合解剖学や病理学などの最重要科目は日本の義肢装具養成校ですでに修得していたため、全く問題は生じなかったし、そのレベルも義肢装具士養成校を超えるものではない.が、だからといって簡単というわけではない(授業内容からすれば日本の義肢装具養成校のレベルはかなり高度。しかしそれ以外の科目、例えば材料学や、機械学などの授業は製造業者のエンジニアによるセミナーであり、テキストが存在せず授業のみでその内容を理解することは困難を極めた.。そのため、わからない事があれば理解できるまでクラスメイトや主任教官に質問した.。質問することで相手は私の理解度がわかり適切なアドバイスをくれるようになる。その代わり私は解剖学や病理学を教える.。外国人がある国の資格を取得しようとする場合、独学では相当な困難を伴う。だからコミュニケーションが最も大切であり、自分が何を考え、何をどのように行おうとしているのかを相手に理解してもらえたら、相手のことも同様に理解することでお互いに信頼関係が生まれる。私はそういう理解し合える最高の友人達に恵まれたことに感謝したい。

              

                              靴坊


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